30代から徐々に出演作が増え、今ではテレビで滝藤さんの姿を見ない日がないほどにご活躍です。ご自身の歴史上で、転機はいつだったと思われますか。
上京したのも「無名塾」に⼊ったのも、結婚したのも⼈⽣における⼤きな出来事ですが、やはりキャリアでは『クライマーズ・ハイ』に出演したことが転機になったと思います。家賃も払えなくなって、「努⼒をしても報われないんだな」とどん底を味わっていたときでした。状況を変えるために、思いつきでアメリカに⾏こうと思い、寝ないでアルバイトをし、なんとか家賃を払い切って貯⾦を始めた頃に合格の通知を受けて、⾃分でアクションを起こせば流れは変わるのだと改めて感じました。
様々な環境の変化を経験されていますが、時を重ねるなかで変わらない部分と変わった部分を教えてください。
変わらない部分はせっかちなところですかね。「時間を無断にしてはいけない」と⺟親から厳しく教わってきましたから。でも、あまりに仕事を詰め込みすぎて⼼も体も疲れてしまった時期があって、それからは植物に触れたり1⼈でのんびりする時間を意図的に作っています。変わったのは、⾔い訳をしないこと。20代の苦しかった時期に、いつも⼈のせいにして逃げていました。⾃分が置かれた環境を⾔い訳にして。それを⼈に指摘されたんです。「あなたが俳優として成功することと、無名塾や仲代さんがどう関係があるんですか」と⾔われてハッとしました。全く関係がない、⾃分が頑張るほかないんだって。それから「逃げない、⾔い訳しない」と台本にも必ず書いていました。⾃分が出演した作品の台本は、僕は捨てられずにずっととってあります。